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挫折があったからこそ今がある。ChatWorkに学ぶ”不屈の精神”

山本正喜さん

今日のゲストはChatWork株式会社CTO(最高技術責任者)の山本正喜さん。
山本正喜さんは以前これまじ!に出演いただいたChatWork代表山本敏行さんとはご兄弟。
そして、ビジネス系チャットツール「チャットワーク」の生みの親でもあるのです。

chatwork

ChatWork株式会社の前身であるEC studioをご兄弟ではじめたのが2000年。
その頃からずっと自社サービスで事業展開をしたいという思いが正喜さんにはありました。
そして、創業してからSEOツールを自社サービスとして展開していたのですが、会社の規模が大きくなるにつれて、他社製のソフト販売事業がメインになっていきました。

「なんとか再び自社サービスを事業のメインに持ってきたい!」
そんな思いを抱いていた正喜さんの夢を叶えたのが2009年にリリースした「Web Analyst(ウェブアナリスト)」でした。

web-analyst

当時からGoogle Analyticsが多くの方に使われていましたが、使い方が分からない方がほとんど。
それならば、”社長でも簡単に分かる”アクセス解析ツールを作ってしまおうとリリースされたのが「Web Analyst(ウェブアナリスト)」でした。

念願のウェブサービス。そして初めての挫折

社内のエース級の人材を集めてまさに社運をかけて満を持してリリースされたこのサービス。
ニーズはあり思惑通りユーザー数は順調に増えました。
しかし、2年で撤退を余儀なくされてしまいます。
それは事業とよべるまでにこのサービスを引き上げることができなかったからです。

このサービスのビジネスモデルはフリーミアムモデル。
まずは無料でサービスを提供し、高機能または追加された特別な有償サービスで収益をあげていくというもの。

「Web Analyst(ウェブアナリスト)」は無料ユーザーは順調に集まったものの、有料ユーザーをなかなか増やすことができなかったのです。
大きな理由のひとつは巨人Googleの存在です。
Google Analyticsにはない機能をつけて差別化するも、Googleは次々にそれらの機能やそれ以上の機能を無償で追加していくのです。
2年間社内のリソースやコストをかけたのだからと、いろいろな施策を打つものの結果は出ず。
断腸の思いで撤退を決意することになったのでした。

正喜さんはこのときに「自分たちのような中小企業がウェブサービスで食べていける時代ではないのか・・・」と大きな挫折感を味わったと言います。

ウェブサービスからコンサル事業への転換

「Web Analyst(ウェブアナリスト)」撤退後、ChatWork社(当時はEC studio)はウェブサービスではなく、Googleなど大手企業が参入しずらいリアルとウェブを融合したサービスに目を向けます。

それが、「IT実践会」です。

it実践会

IT化がなかなか進まない企業に対し、ChatWork社が実践しているノウハウをツールの紹介とともに、その使い方までをサポートすることを目的にした事業です。
ウェブ上でノウハウを公開するとともに、実際にChatWork社がどのような経営をしているのか会社見学に来てもらったり、リアルで勉強会を開いたりというIT実践会にニーズを感じた多くの中小企業が参加してくれました。

しかし、しばらくやってみて感じたことはこの形態ではなかなか企業のIT化が進まないということでした。
ノウハウを聞いて終わってしまう企業が多く出てきたのです。

自分たちだからこそ作れるチャットサービス

そのような状況の中で正喜さんの中に「やはり自分はウェブサービスをやりたい」という気持ちが再度ふつふつとわいてきたのでした。
正喜さんは考えました。「IT経営に役立つサービスをつくれないだろうか?うちが使っているもので一番コアになっているツールって何だろう?」と。

それはスカイプでした。

ChatWork社では10年ほど前から社内ではメールではなくスカイプチャットを使用していました。
そのため、そのノウハウは非常にたくさんたまっていました。
ただ、そのノウハウを他の企業が使用することは不可能でした。
スカイプの弱点を補うChatWork社ならではの独特の使い方は簡単に真似できるものではなかったのです。

それならば、「自分たちも社内で快適に使えるチャットサービスを作ったらどうだろう?」と正喜さんはこのとき思いついたのです。

チャットの一番の弱点は流れていってしまうこと。
でもタスクは流れていっては困ります。

「チャットもできて、タスク管理もできるサービス。
そんなサービスがほしい!」

正喜さんは強く思ったのです。

思いを再び伝える

当時、ちょうどウェブでリアルタイムで通信する技術が手の届くものになってきていました。
そして、当時リアルタイム通信のチャットサービスはあまりありませんでした。

「これはいけるんじゃないだろうか?チャットを知り尽くした自分たちならいいものができる!」

そう思った正喜さんは企画書を作り、役員に見せました。
しかし、役員の人たちにはことごとく却下されてしまいます。

「いまさらウェブサービスをするの?」
と。
そして、当時はGoogle Waveがちょうどリリースしたときだったのです。
「Web Analystに懲りずにまたGoogleと対決をするのか?」
と、どの役員からも前向きな答えをもらうことはできませんでした。

しかし、正喜さんはGoogle Waveをひと通り使用してみて、これは自分たちが使いたい使い方はできないとすぐに分かりました。

そこで再度、役員一人ひとりにチャットワークの可能性を切々と説き、そしてついに最後には社長の山本敏行さんから「そこまで言うならやってみようか。最悪社内ツールになればいいし」とGoサインをもらうことができたのでした。

たった一人からの挑戦

しかし、出された条件は過酷なものでした。
”社内にリソースはないから、やるなら一人で”というものだったのです。

当時は事業形態を変え、社内は大変な状態。
そんな中、CTOなる役職を持ったものが何をやっているんだという雰囲気もあったと言います。
それでも時間が空いたデザイナーにデザインをお願いしたりと、3ヶ月でプロトタイプを作ることができたのでした。

それから正喜さんの行動は少々強引ながらも早かった。
社内のすべてのスカイプチャットを一気にチャットワークに置き換えたのです。
200〜300あったスカイプのグループチャットのタイトルの頭にすべて【移行済み】と名前をつけて、チャットには「このグループはチャットワークに移行しました。リンクはこちら」と手作業で入力していったのです(笑)

プロトタイプのチャットワークに移されたスタッフの方はたまったものではありません。
まだスカイプよりも機能はよくないし、動作は重いし・・・。
そんな声を聴きながらも正喜さんは「まぁ、少し待って。これからどんどん改善していくから」と、着々と改善を進めていくのでした。
スタッフからは不満だけではなく、こんな機能がほしいといった要望もたくさん出てきました。
それらの機能もどんどん追加していきました。

その甲斐があり、数カ月後には「スカイプよりも便利でいいよね」という声が社内で聞こえるようになりました。

社内ツールから事業へ。しかし待っているのは茨の道

そんなときに社長の山本敏行さんが当時持っていたustreamの番組でチャットワークのことを軽く紹介します。
するとタイムラインは「使いたい!」「サービス化してほしい」という声があふれ大反響となります。
その声を聞いて社内は「これはサービスとしてもいけるんじゃないか」という空気に変わります。
チャットワークを事業化しようとポジションが変わったのです。

開発も正喜さん一人から三人体制になりました。
そして6ヶ月後、リリースするに至ったのです。

しかし、ここからも茨の道は続きます。
そう簡単には利益を生んでくれないのがウェブサービス。

くしくもチャットワークは一度大きく失敗したWeb Analystと同じフリーミアムモデルです。
簡単には有料プランにユーザーが移ってくれないことは明白でした。
ただ、Web Analystと違ったのはサービスリリース半年後で、サーバー代ぐらいはペイできるようになったのです。
これは明らかにWeb Analystとは違った反応でした。

しかし、人件費を払えるほどの収益が出るわけでなく、赤字が積み重なっていきます。
そんななか、EC studioは社名をChatWork株式会社に変更し、また、他の事業を手放し背水の陣を敷きます。

そして一番苦しかったのが昨年だったと正喜さんは話してくれました。

どんどんと他社がチャットサービスに乗り出してきます。
明らかにチャットワークを模倣したサービスも出てきました。
後発には後発のメリットがあり、中にはチャットワークよりも高機能なサービスもあります。

これはまずい。いま突き放さないといけないと、ChatWork社は一気に攻めに入ります。
開発リソースを倍増する計画を立てたのです。
そして、実際にエンジニアを採用し、開発リソースを倍増します。
人材を雇うと当然ながら人件費という固定費が膨らみます。
そして、どんどん赤字が積み上がっていきます。

育てる事業から攻める事業への転換

いったいいつ底を打つんだという重い空気が流れる中、ついに反転の兆しが見えたのが昨年秋。
金食い虫であったチャットワークがついに事業として成り立ちはじめたのです。
正喜さんが一人で開発を始めてから3年・・・。

正喜さんは言います。

「ウェブサービスは本当きつい。特にフリーミアムモデルは無料で使われるリードタイムがとても長いんです。
Web Analystの失敗もあったので、価格を含めてとにかく調査に時間をかけました。有料プランへの敷居が高すぎても低すぎてもいけない。絶妙なバランスが必要なんです。
チャットワークは3年かかりようやく育てる事業から攻める事業に変えることができたのです」

こうした思いを昨年の誕生日と年の瀬にfacebookにも投稿されています。

いかがでしょうか?
傍から見ていると順調に推移しているサービスも実際はこのような苦しみを乗り越えて今に至るのです。

EC studioは社長の山本敏行さんが米国の留学中に立ち上げ、そして弟の正喜さんが加わりはじまった会社です。
Web Analyst事業までは本当に順調に利益をあげ、右肩上がりに会社を成長させてくることができました。
はじめての挫折がWeb Analystだったのです。
しかし、この挫折があったからこそ、ChatWork社も自分も大きく成長することができたと正喜さんは話してくれました。

あ!!!!!!
あまりに話しに聞き入ってしまい、正喜さんの「これまじ!」を聞く時間がなくなってしまいました。(次のアポの方が来てしまいました・・・)
し、しまったぁ、「これまじ!」始まって以来の失態(;・∀・)

いや、でも今日の「これまじ!」は、正喜さんの”不屈の精神”でしょう。
うん、間違いない!!

攻めに入るチャットワーク。
グローバル展開を含めて、今年はますますチャットワークの活躍が聞ける年になるでしょう。
心の底から応援しています!

>>チャットワークの公式サイトはこちら


今回のゲスト
ChatWork株式会社 CTO 山本正喜さん (facebook

大学在学中より兄の山本敏行とともに兄弟で創業。
以来、製品開発担当として企画・マネジメントを行いながら、現在でも自らプログラマとして現場の第一線で開発を行っている。
2011年3月にクラウド型ビジネスチャットツール「チャットワーク」を開発


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