筆先に込めるのは感謝の気持ち「万年筆を使った手書きの文書」
本日のゲストは、大阪・谷町四丁目にある紳士服メーカー「株式会社NFL」の三代目社長・川辺友之さん。43歳。
私とほぼ同世代と思えないほど、まるで悟りを開いたかのように落ち着いて角の取れた話しぶりに、成熟というものを感じずにいられませんでした。
きっと一苦労も二苦労もあったんだろうなぁ、と想像してしまいます。
どんな「これまじ」が聞けるのかと期待を込めてうかがったところ、見せてくださったのは一本の万年筆。
この万年筆は、川辺さんが「心の師」と仰ぐ方から贈られたという、思い入れ深い特別な品です。ですが、この一本というのではなく、万年筆という筆記具のすばらしさ、そしてそれを使ってしたためる手紙や葉書など「手書きの文書」の魅力を今回の「これまじ」として紹介します。
一度知ったら戻れない。独特の書き心地
川辺さんは日課のように、商談で会った方や名刺交換をした相手などにお礼状を書いているといいます。
月にハガキを20〜30枚、手紙を2〜3通は書くそうで、書道の腕前は初段。

「万年筆は味が出るし、気持ちが乗り移るんですよ」
強弱が自在につけやすく、気持ちを表現しやすいのだとか。
万年筆はその構造上、筆圧があまり要らず、書き手の個性が出やすい書き味になるようにできています。
「いろいろなペンを使ったけれど、ボールペンでは硬すぎるし筆だと柔らかすぎる」
と、たどり着いたのが万年筆でした。
実は近年、万年筆の良さが見直されてきて、愛好家の間でも人気が高まっており、専門誌なども出版されているようです。
しかし、それをつくる職人の数は減っています。とりわけガラス管でつくる本格的な万年筆は、つくれる職人が数人程度しかいないらしく、価格も数十万円という極貴重品となっています。
手書きの文字はやっぱり心を打つもの
紳士服屋という仕事柄、昔ながらの年輩者も多く、やはり直筆の文書は心をつかむのに効果が大きいそうです。印鑑も独自のものを作り、切手にいたってはシーズン毎に種類を変えて季節感を演出するという徹底ぶり。相手を大切に思っていることがまっすぐに伝わります。
ここまでされれば誰しも心動かされるのが人情というもの。
こんなエピソードを話してくれました。
「かつて、東京に新規店を出す際、表参道に希望の物件を見つけました。
しかし、他にも応募が4、5社あって、競合することとなったのです。
そこで私は、東京の某女子大学の理事長であるというその大家さんに手紙を書きました。いかにその物件を本気で所望しているか、思いの丈を込めて、飾らず、真剣に。
その結果、見事契約を勝ち取ることができたのでした」
もちろん理由はそれだけではないかもしれませんが、直筆の文字で情熱をありのままに伝えたことが出会いをたぐり寄せた、という好例ですね。
きっかけは母の教えと一冊の本だった
今のように日々、万年筆で文字を書くという習慣は昨日今日で身についたわけではありません。もともと商売人であった母の教えなのだそうで、母親からもらった『ラッキーセブンレター』という本を読んだのがきっかけ。伝えるべきことは7行で書くべし、といった主旨だったそうです。
それから直筆で手紙を書くことを始めたもののの、一度は遠ざかってしまいます。本格的に復活したのはここ8年ほどだそうで、「どうしても若いうちは書かないものですよ」と川辺さん。
ネット通販参入。繁栄から凋落へ
「万年筆で手書き」などと、ここまで聞くと完全なアナログ人間かと思いきや、川辺さんは実は先進的なWEBを活用した経営者だったのです。
そのきっかけは、ひとつの新聞記事でした。日付は1996年、まだ創業一年後のAmazonについての記事で、「これからは個人のパワーが大企業をもしのぐ時代が来る」といった内容のものでした。この時の記事は今もスクラップして保存しておられます。

「インターネットって、すげー!」と激しく感銘を受けた川辺さんは、この年にさっそくホームページを作り、メルマガまで発行してしまうのです。
そして1998年に家業の三代目を継ぎ、翌年には楽天市場に参入します。ネット広告をバンバン出し、ガンガン売り上げを伸ばしていきました。
しかしやがてそれも頭打ちになります。60億あった会社の売上が2億にまで下がります。まさに繁栄から凋落。
そんな時に出会ったのが、川辺さんの人生に決定的な影響を与えた「師匠」と呼ぶ人物。出会って、これまでの経営哲学を根底から覆されます。
売ることだけを至上命題として疑わず、イケイケドンドンで疾走してきたこれまでの自分。
それがつまづいた時に、その方から「商売とは顧客創造なんだよ」と教えられ、ハッとしました。
大切なのはお客さん作りなのだと。お客さんの喜びが自然と商売を繁盛させてくれるのだと。目が覚める思いでした。
今は感謝の気持ちに満ちていて、人のために尽くす、ファン作りをするということを理念に、自然と売り上げが伸びる商売ができているといいます。
それが万年筆でぬくもりのある手紙を書くことにつながっているのです。
この万年筆は人生を変えた師匠からいただいたものですが、それ以上の大きなものを贈られていたのでした。
最初に感じた、悟りにも似た成熟した雰囲気は、こうした経験からつくられたものだったんだなぁと理解しました。

ネットの力で地域支援を
川辺さんはその長い商売の中で、中小企業が大手の好き勝手に翻弄され潰されていく様をたくさん見てきました。
けれど、ネットを活用すれば小さな集団でも大きな組織に立ち向かうことができることも知りました。
そして今、恩返しをするかのように、「街ブログ大阪」というサイトを運営したり、クラウドファウンディングである「FAAVO大阪」といった事業を立ち上げたりして、大阪でがんばる商店や中小企業を応援する活動に尽力されています。
相撲や演歌の世界で「タニマチ」といえば、物心両面でサポートする資産家の後援者のこと。豪福な呉服問屋の主が贔屓(ひいき)の力士を支援したのが最初だと言われています。
その語源となったのがまさしくここ、大阪の谷町。
そんな支援スピリッツを歴史的背景に持つ町から、今では中小企業をサポートするべく情報を発信しているのです。
ネットと万年筆という、一見相反するように見える伝達手段。この両刀を使い分けて、デジタルでもアナログでも相手の心に響かせることができる三代目の眼には、迷いも曇りもありませんでした。

(取材:板羽宣人 / 記事:Rose)
今回のゲスト
川辺 友之(twitter / facebook)
株式会社NFL 代表取締役
1971年4月15日大阪市生まれ
1994年3月 慶應義塾大学経済学部卒業
1994年4月 株式会社ダイエー入社
1998年3月 大阪に戻り家業の紳士服メーカーを継ぐ
1999年11月 楽天市場にて「フォーマル専門店ノービアノービオ」出店
2004年11月 有限会社ノービアノービオ(後の㈱NFL)を設立
2008年7月 東京表参道に「ノービアノービオ南青山店」オープン
2010年11月 服のお直し・リフォームショップ「谷町ヌーボ」オープン
2012年2月 大阪梅田茶屋町に「ノービアノービオ梅田本店」オープン
2012年3月 大阪地域特化ブログポータル「街ブログ大阪」運営開始
2014年3月 大阪密着クラウドファンデイング「FAAVO大阪」運営開始
大阪谷町は明治以来、紳士服の街。その紳士服メーカーを引き継ぐ3代目。大阪市中央区谷町に唯一現存する「紳士服縫製工場」を経営。何十億の借金を抱えた家業をIT・ネットの力で復活させた。
縫製工場をファクトリーブランドに成長させ、いつかは海外へメイドインジャパン製品の輸出を目指している。






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