時代の変革期を生き抜くための指南書3冊
今日のゲストは株式会社空気読みの跡部徹さん。
跡部さんとはまだ3度しかお会いしていないのですが、ずっと昔からお付き合いさせていただいている気がしています。
facebookを通じて普段から交流しているということもありますし、また、74年生まれの同い年ということもありますが、何よりも考え方や生き方が似ていると感じることが多々あるからだと思います。いつもいい刺激をいただいています。
跡部さんの会社の名前は「株式会社空気読み」。
ちょっと変わった名前ですよね。
この名前には次のような思いがあると跡部さんはお話ししてくれました。
今は時代の変革期です。そんなときは、世の中の大きな流れや文脈を読めてないと調査だけでは出てこない人が欲する潜在的なものを知ることはできません。消費者が潜在的に求めるものを「空気読み」し、その結果を社会に還元することで「ほしいものがある」社会を実現したいのです。
そう。今回の「これまじ!」のキーワードは”時代の変革期”です。
跡部さんが今回紹介してくれた「これまじ!」商品は時代の変革期を生きていくためのヒントとなるこれらの書籍でした!
「評価経済社会 ぼくらは世界の変わり目に立ち会っている」 岡田斗司夫著
「貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する」 橘玲著
「時代を生きる力」 高城剛著
評価経済社会 ぼくらは世界の変わり目に立ち会っている 岡田 斗司夫 ダイヤモンド社 2011-02-25 |
1冊目のこちらの書籍は、貨幣の時代から、信頼や行なってきたことが評価されることが価値になるという「評価経済社会」に変わりつつあることを示唆しています。
跡部さんはこのように言います。
「現代はお金さえあればという資本の時代になってしまっています。たくさんの人を雇い、工場を持ち、たくさんの商品を作り、商品を流通させるためにはテレビ広告などのマス広告が必要であり、また、それだけのお金をまわすとなるとお金を管理する部門も必要になり、大きな組織が求められています。
ただ、これは経済が右肩上がりでなければならないと考えに基づいたものです。逆に、資本は必要ないと考え、株主がいないのであれば、大きく売上が上がらなくても、より価値があることをできる社会を作れるはずです。
これまでも、老舗と言われるお店は、販売される商品数が少なくても、質が良いものを長く食べてもらうことで成り立っていた時代がありました。それが現代は一気に大量生産の時代になってしまいましたが、今また昔の流れに戻ってきてるいるんじゃないかと僕は思うのです。
大きな会社の時代から個人の時代へ。そうした時代に何が価値を生み出すのか、どういう行動をすればいいのか、そうしたことを考えるのに適した本がこの岡田斗司夫さんの「評価経済社会」なんです。」
実際、跡部さんへのお仕事の依頼は評価からの口コミで舞い込んでくると言います。
「前のプロジェクトで一緒にやった空気読みの跡部さんて人良かったよ!」「空気読みの跡部さんって人おもしろいことやってるから会ってみたら?」とこれまでしてきたことが評価されて、仕事を依頼されるのです。
跡部さんはこのようにも話してくれました。
「大きな会社とも一緒にプロジェクトを組んで仕事をしているのですが、マイクロ法人であってもそうしたことができるようになっているのは、まさに評価の時代に入ってきているなと感じています。
依頼された仕事を一人でまわせないときは、僕がプロジェクトチームを編成してやっていくのですが、そのときに選ぶメンバーはやはり、過去に一緒に仕事をした方であったり、信頼出来る人が「あの人いいよ」と紹介してくれた方とチームを組みます。
そういう方はきちんと働いているか業務チェックをする必要もなく、お互いに気持よく仕事ができます。お金に価値を置くのではなく、信頼できる人と信頼できるプロジェクトをやっていこうとした瞬間に、より仕事が楽しくなるということが起きているんじゃないかなと思っています。信頼に価値を置けば、競合プレゼン案件は受けないとか、自分がやるべきでない仕事は断れます。そして、信頼できるプロフェッショナルと案件ごとにチームを組むと「信頼」を担保できるんです。
僕は自分がやりたいことを、好奇心をベースに働く集団でありたい。そして、給与をもらって働きたい人ではなく、自分の能力を提供して後から対価をもらえる人たちと仕事をしたいと常に考えています。」
貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する (講談社プラスアルファ文庫) | |
橘 玲
講談社 2011-03-22 |
2冊目のこちらの書籍では雇われない行き方と格差社会を逆転するためのマイクロ法人の活用法について書かれています。
”サラリーマンは国からも企業からも搾取され、使い捨てられる運命しかない。経済的独立を果たすために「一人法人」化し、全てのメリットを享受せよ”と説きます。本書内には次のような記述があります。
”会社をつくることによって、個人とは異なるもうひとつの人格(法人格)が手に入る。そうすると、不思議なことが次々と起きるようになる。まず収入に対する税負担率が大幅に低くなる。さらには、まとまった資金を無税で運用できるようになる。そのうえもっと驚くことに、多額のお金をただ同然の利息で、それも無担保で借りることができる。・・・etc.”
そして、著者である橘玲さんはこのように言い切っています。
”マイクロ法人は、国家を利用して富を生み出す道具である。”
本書内では、サザエさんのマスオさんが起業して、マイクロ法人を設立します。そして、今まで勤めていた会社から給与ではなく、業務委託費として報酬をもうらようになった場合、所得がどれだけ増やすことができるのか、その仕組を詳しく説明しています。
貨幣社会から次の時代へ、つまり、大きな会社の時代から個人の時代へ変わるときに、個人のプラットフォームについて考えるのに適した書籍です。
実際に跡部さんはリクルートから独立し、現在は一人で株式会社を作って、株式会社空気読みから報酬をもらうカタチで活動しています。
時代を生きる力 高城 剛 マガジンハウス 2011-06-23 |
3冊目のこちらの書籍は、高城剛さんが21世紀をどのように生きるべきかについて現状を分析し、今後の展望を見据えて提言しています。
高城剛さんと言えば、沢尻エリカさんの(元?)夫であり、何をしているかよくわからない怪しい人という世間では見られがちなのですが、実際に著書などを拝読すると、時代の先を読み新しい生き方を実践している人だということがよく分かります。
本書の内容は、現在の日本の仕組みは過去に最適化されたものだから、今の時代にはあわなくなってきているということ。そして、今は時代の変わり目なので、これまで自分が頼って生きていたものから一旦離れてみるべきではないかということを指摘しています。
そして、そんな時代だからこそ、自分にとっての優先順位は何なのかしっかりと考えた上で、どんな働き方がが自分に合っているのか、どんなライフスタイルをおくりたいのか、自分と向きあって考えた方がいいのではないかと主張しています。
跡部さんは最後にこう締めくくってくれました。
「この3冊の中で紹介されている生き方は、経済が右肩上がりで安定してお金がもらえると考えている人からしたら、意味が分からない社会と言われることが多いのです。
ただ、僕は一方では既存の仕組みも実はこういうリスクがあるんだよということを理解した上で、こういう新しい生き方や仕組みが出てきているということも知った方がいいんじゃないかと思っています。みんなが大企業で働くことを目指したり、就職することが当たり前の世界観に捕らわれなくてもいいんじゃないかなと思うのです。
僕は実家が自営業だったので、会社員や公務員以外の働き方の楽しみを子どもの頃から見えていましたが、今、就職活動している学生は会社に勤めるという枠の中だけで考えてしまっている人が多いと思うんですよね。僕はそういう世界だけじゃないんだよというロールモデルを示したいといつも考えています。
時代が変化してきている、そういう生き方があるということを示してくれている書籍がこの3冊なんです。」
ひじょ〜に、共感できます!
私は安定を目指して公務員になりましたが、そこから疑問を感じ起業し、現在は跡部さんとよく似たスタイルで生きています。
個人の評価で仕事を得て、そして1箇所に留まることのリスクを感じ、家族でその時その時のタイミングで大阪からニセコに場所を移して生活をしたり、また、今年の春からはその場所を海外に移したりというスタイルを取っています。
普通の方からすれば、まず、公務員を辞めることが理解できないでしょうし、その時々で暮らす場所を変えていくことも理解できないことだと思います。
ただ、私からすれば、そういうことができる時代だし、また、この生き方が自分や家族にとっては幸せだし、子どもの為にもなると感じているのです。
私も跡部さんと同様、自分の生き方が「こんな生き方もあるんだ」という一つのロールモデルになればいいなと、お話をお伺いして思いました。
跡部さん、素敵なお話をありがとうございました!
おまけ:跡部さんの3冊の著書
跡部さんはこれまで3冊の著書を出しています。
「空気読み」企画術 跡部 徹 日本実業出版社 2010-03-18 |
こちらの書籍は、表面的なものを見ているだけでは新しい企画や事業は出てこず、潜在的なものであったり、世の中の変化や兆しなどを読めてないと消費者から本当に求められているものは生み出せないという、まさに跡部さんが最も大切にしていることについて書かれています。
顧客に愛される会社のソーシャル戦略 跡部 徹 株式会社メンバーズ(執筆協力) 技術評論社 2011-12-27 |
そして、こちらの書籍は、ソーシャルメディアについて書いた書籍なのですが、テクニックとしてのソーシャル活用本ではなく、真摯に愚直に顧客に向きあう会社や社員が報われる時代が来たということをメッセージしている内容です。跡部さんはこのように断言されています。
「ブラック企業は、ソーシャルメディアを活用しないほうがいい」
「顧客を向いて仕事をし、従業員や取引先と仲間になれている会社じゃないと企業が活用しても意味がない」
組織のほうや上司を見て仕事をするのではなく、顧客のほうを向いて真摯に仕事する会社が増えれば、中で働いている人ももっと仕事が楽しくなるはずなのに!という想いを込めて書かれています。
前に進む力 ダグラス・パーヴァイアンス 跡部 徹 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2011-06-16 |
こちらの書籍は、アメリカで45年続く、グラミー賞も取っている名門ジャズバンドのリーダーにインタビューをして書いた書籍です。
このジャズバンドはNPO団体で運営されていて、メンバーは一人ひとりがプロのミュージシャンなのです。NPO団体なので、お金を目的にやっていなくて、プロのミュージシャンが良い音楽を作ること、そして、ファンのことだけを見て楽しみながら活動しているのだそうです。
一見アメリカ人は個が強くて、団体でやることが苦手じゃないかと思われがちなのですが、実はニューヨークの老舗のジャズバンドが、信頼できる仲間とプロジェクトを組んで、信頼をベースにお金を目的ではなく、世の中や社会に自分たちが提供できる最高のものを提供しているのです。
跡部さんはこのジャズバンド「ヴァンガード・ジャズ・オーケストラ」のやり方が、チームを組んでプロジェクトを行うときにものすごくいいロールモデルになっていると言います。
一見ジャンルがバラバラに見えるこれら3冊の著書ですが、跡部さんはこのように言います。
「どれもそのタイミングで僕がメッセージしたいことであり根底には一つの共通した流れがあります。僕は仕事も人生ももっと愉しんでいいもので、そうなることがより素敵な社会になる方法だ!ということです。そして、そのために自分ができることをコツコツと提示していこうと思っています!」
私ももちろん3冊とも拝読させていただきましたが、私にとって、これらの3冊も「これまじ!」です!
今回の記事を読んで跡部さんに興味を持たれた方はぜひ読んでみてくださいね!