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靴もカバンもお肌のメンテナンスもこれひとつで大丈夫!オールインワンのこれまじ!アイテム「ワセリン」

赤や緑や黄色、ピンクやオレンジといった色とりどりの粘土が練られて姿を変え、可愛らしい動物や人の容貌に形作られていく。焼き上げられて完成し、生き生きと躍動感を見せる小さなキャラクター達。
nendo

今回の「これまじ!」にご登場いただくのは、立体造形家・森井ユカさんです。
森井ユカさん

森井さんのお仕事は、粘土で製作するキャラデザイン。作品は広告や雑誌、絵本などに使用されます。オリジナルに加え、アニメやゲームなど既存のキャラクターを立体化する仕事も多く、ポケモンのキャラだけでも100体を超えるとか。その手から繰り出される職人技は、まさに粘土の魔術師。

手前2枚が最新カード。左上2枚が韓国版、右上2枚が北米版

手前2枚が最新カード。左上2枚が韓国版、右上2枚が北米版

作品づくりだけでなく、教則本を書いたり、専用道具を作ったり、子供用の小麦粘土のプロデュースにも携わっていて、色決めをしたり中国の工場まで視察に訪れたりもします。
出版物と連携した作品の展覧会も催しており、渋谷のヒカリエや梅田のLOFTなどで好評を博しました。

アーティストとして、クリエイターとして、ビジネスパーソンとして。仕事の幅の広い森井さん。おだやかで上品な話しぶりからは想像できないアクティブな一面も秘めているようです。

二次元より三次元に向いていると気づいて立体に転向

森井さんが学んだのは渋谷にある桑沢デザイン研究所。実は専攻していたのは立体ではなく平面でした。ところが、どうやら自分は描くのが遅いことに気づいたそうで、ある時ふと粘土で立体を造ってみたら思いのほか早く出来上がり、「こちらの方が早くて効率が良い。自分にはこれだ!」と方向転換します。

以来、25年にわたり、立体造形家としての道を歩んできました。
雑誌や広告に使われるクレイ人形などは、CGで描かれていると思われがちですが、それだとリアルな存在感がどうしても出ないそうで、やはり手作りの質感が求められるのです。
「そもそもCGより粘土で作った方が早いんです」とも。

仕事として自立してからも探求をやめることなく、東京造形大学の院に入り直し、勉強を深めたりもしました。
今では母校で講師として「日本人にとってかわいいとは何か」を研究テーマとする講座を受け持っています。

著者としても活躍。めずらしい雑貨などを集めていたら出版することに

森井さんのもう一つの顔は本の著者。
可愛らしくファンシーな小物を愛する森井さんは、海外で日用雑貨を集めるのが好きで、若い頃から旅行や仕事で訪れた世界各地でめずらしい物を買ってきたりしていました。
「見たことのないものが見たい」一心で、地元の薬局や郵便局にまで探しに行くのです。

造形の仕事を始めて10年ぐらい経った頃。打ち合わせの際、たまたまそれらコレクションを見た編集者に、本にまとめないかと勧められます。そうして取材から写真、デザインまですべてを自らこなし、初出版。
それを皮切りに、世界のスーパーマーケットで見つけた雑貨を紹介するシリーズ本や、旅のエッセイなど、30冊近い著書を記されています。

森井さんの著書の数々!

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とにかく形あるモノ・製品が好きで、モノを通してその国の文化を知りたいという思いが根本にあるといいます。ただ、読者には難しく考えずに見た目の可愛らしさや軽い興味本位で読んでもらえたら、と考えています。

立体造形家そして著者。現在はこの二本柱の仕事が半々ぐらいで、ちょうどいいバランスなんだといいます。
造形の仕事も本を書くこともどこかでつながっていて、良い相互作用が働いているように見えました。

TVチャンピオンで優勝も。黙々と作り続けて25年

スポットを浴びるのは生み出す作品だけではありません。自らメディアに登場することも。
以前、テレビ東京の「TVチャンピオン〜粘土細工王選手権〜」という番組に出場し、見事優勝を果たしたこともありました。番組は海外でも再放送され、香港や台湾で声をかけられることも多いとか。

この業界では森井さんの独壇場なのか、と尋ねてみたら、実はある程度の人数はいるようなのですが、表に出ようという方が少ないそうです。かつてネットの黎明期にホームページを立ち上げた時でも、同業者で作っている人はまだほとんどいませんでした。

しかし何より本分は製作すること。粘土のキャラクターであっても書籍の執筆であっても、
「作品を作っている時は何物にも替え難い至福の時間」といいます。
粘土を造る時は50時間ぐらい集中して臨むし、何週間も取材で家を空けることもあるとか。
とてつもない集中力がこうしたクオリティの高い作品群につながっているのです。

いつも肌身離さない「これまじ!」はワセリン

さて、そんなマルチなクリエイターとして活躍する森井さんですが、もう絶対に手放せないアイテムがあります。その「これまじ!」は「ワセリン」。
ワセリン
手荒れや肌の乾燥を防ぐ塗り薬のようなものとしておなじみですが、森井さんは、自宅用・職場用・持ち歩き用と分けて常に携帯しているほどなのです。
手を酷使するお仕事ですから、マメにケアしようとするのもうなずけます。

ワセリンといってもいろんな商品がありますが、中身はだいたいどれも同じで、石油を精製して作られた白いバター状のものであることに変わりはありません。
なので、これといってこだわりはありませんが、パッケージのデザインなどで選んだりするそうです。

たとえばニューヨークで一番古い『ビゲロ』という薬局で買ってきたもの。
ノルウェーで買ったもの、ロンドンで買ったもの、などを見せてくれました。
旅先へは荷物をコンパクトにするため、オールインワンでこれ一つあればOK。靴やカバンのメンテナンスにも何にでも使えるのがいいんだそうです。

「冬場、鼻の中に塗ると乾燥しないんですよ」と意外な使い方を教えてくれました。
ここまでワセリンを使いこなしている人はなかなかいないかもしれませんね。

    

これぞ一流。高いプロ意識で果たすべき役割を知る

今後の展望を伺ってみたところ、意外にも「先のことはノーアイディア」とのお答えが。
実はこの歳まで生きるとは思わなかったそうで(といってもまだお若いです)、今を余生の気分だといいます。それゆえでしょうか、欲張ったところがなく「目の前の仕事をきっちりやるだけ」と、ブレることなく地に足のついた職業意識を保ち続けておられます。

「私に求められているのはカワイイ系の作品」と自認する森井さん。以前はキモチワルイ系なども作ってみたりしたけれど、いまひとつ反応が薄かったそうで、今では自分の果たす役割が何かということをはっきり自覚しているように見えます。

自分の好きなことを仕事にしてはいますが、好きなようにやるだけでなく、その中で求められているニーズを的確に捉え、しっかり応える。これぞプロフェッショナルというべき態度でしょう。
これこそが25年の長きにわたって一線で活躍し続けている理由なのでしょうね。

ご自身の作品についても、「造り終えると興味は薄れて、次の作品へと意識が向かうんです」と、端々にプロならではの、時に合理的で時に情熱的な考え方を示してくれました。

新しい粘土が出ればすぐ試したりするなど、研究を絶やさず進化し続ける森井イズム。
これからも様々なキャラクターがその手によって命を吹き込まれていくことでしょう。

YUKA DESIGNさんのHPはこちら!


(取材:板羽宣人 / 記事:Rose)

今回のゲスト 森井ユカさん(facebook / ホームページ

立体造形家/雑貨コレクター/著者
有限会社ユカデザイン代表
桑沢デザイン研究所 非常勤講師
自由大学 講師
専門学校桑沢デザイン研究所・リビングデザイン科卒業
東京造形大学大学院修了「日本人にとってかわいいとは何か」
代表著作『スーパーマーケットマニア』シリーズ(講談社)
小さいものを愛でることと作ることが仕事。
立体造形では粘土を使ったキャラクターデザイン、漫画のキャラの立体化、ねんど遊びセット「ねんDo!」の企画・デザインなど。
世界各国を旅するうちに、スーパーマーケットや郵便局で見るごく普通の日用雑貨や食品のパッケージデザインに魅了され、書籍にまとめるようになり、2013年には渋谷ヒカリエd47MUSEUMにて、日本47都道府県のスーパーを取材した集大成「みんなのスーパーマーケット」展をキュレーションする。
東京都多摩市の公団住宅出身。
主な人格形成は手塚治虫の漫画と東京12チャンネルの番組による。


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