ご飯の美味しさを再発見させてくれる炊飯ツール「羽釜(はがま)」
海外旅行などに出かけて一週間もすると、無性に白ごはんが食べたくなりますよね。 あれって、やはり日本人に刻まれたDNAなのでしょうか。
弥生時代に伝わったとされる(諸説あり)稲作により狩猟生活から解放された結果、飢えを克服し、富の蓄積ができるようになりました。日本人の食文化に米は欠かすことのできないものとなり、さらに生活や経済の中心でもありました。
ほんの150年前まで、米の生産高がそのまま藩や家の財力を表していたぐらいなのです。
日本の歴史は米の歴史といっても過言ではないでしょう。
そんなお米文化を盛り上げるべく、シライジュンイチさんは夫婦で「ごはん同盟」なるプロジェクトを発足させました。
「炊飯をエンターテイメントに!」をテーマに掲げ、ごはんライフをエンジョイする生粋のごはん好きが今回のゲストです。
ひたすらごはんを食べるイベントが好評
シライさんの実家は新潟の米農家。
跡を継ぐこともなく東京に出てきたのですが、そこは農家の息子、どうしても気がかりで実家の米を東京で売ろうと考えます。
米はそこそこ売れていたのですが「販売だけだと活動が地味になってしまい、新しい展開をしたくなったのです。
そこで「米を売るんじゃなくて、ごはんを食べてもらうイベントを企画しよう!」と思いつき、調理師である奥様と一緒に、ひたすらごはんを食べるイベント「On the Rice」をスタートさせます。
イベントには毎回30人前後の参加があり、ごはんはお代わり自由の食べ放題。一回の開催で炊くお米はなんと2升×3回=60合ほど。(1升は10合、1合は約150g)
たらことかすじことか魚の煮付けなどおかずになるものも用意して、ただただごはんを食べるという食のイベントです。
その活動は評判を呼び、他のイベントに招かれたり雑誌に取材されたりもしました。
また他にも、要望の多いご飯の炊き方講座などのワークショップも開いています。
米の研ぎ方や使う道具、鍋の違いによる炊き比べなど、簡単そうに見えて以外と知らないコツを伝授してくれます。
ざっくりいうと、炊き方はほぼ同じらしく、一番差が出るのは鍋なんだそうです。
家庭のコンロで使える本格羽釜でふっくらごはん
専門家はまず道具にこだわります。シライさんの「これまじ!」はこの羽釜(はがま)。
羽釜とは、かまどに乗せる時の引っ掛けが羽のように出っ張っているのでそう呼ぶのですが、これは家庭用のコンロで使えるようにした実用的なもの。底の形状が絶妙なカーブを描いていて、黒い部分全面に火が当たるので効率良く熱が伝わりやすいのが特徴です。お値段は1万円ほど。
使用感ですが、土鍋で炊く方がモチモチ感は出るそうで、この羽釜はどちらかというと米の粒感がしっかり残る炊き上がりになるんだそうです。このあたりは好みといえるでしょう。
また、シライさんは使いませんが、市販の電気炊飯器もけっして悪くはないといいます。
高級な炊飯器は、中身は土鍋だったり鉄釜だったり本格的なものが使われているそうで、さらにタイマーや保温機能などが付いているので、普通の人はこちらを選んでもいいでしょう。
でも細かい火加減が自在に調節できるのも羽釜のメリット。
ここで、専門家が教えるおいしいご飯の炊き方のコツをお教えしましょう。
【知っ得!釜でごはんをおいしく炊くためのポイント】
● 米の研ぎ方
・米の量は釜のサイズにもよるが、3~4合ぐらいが適量
・釜に水を張った状態で研ぐのではなく、水を捨てて米同士をこすり合わせるように洗う
・こすりすぎると米が割れてでんぷんが水に溶け出し、ベタベタなごはんになってしまうので注意
・研いだあとの水をふたたび吸水してしまわないように捨てて、入れ替える
・20回研ぎ×3セットぐらい
・うっすら水が透けて下の米が見えるぐらいでOK● 炊き方
・米を洗ったあとしっかり吸水させる
・炊き上がるまでに全体で30分
・最初の10分で沸騰するぐらいの火加減に
・次の10分で沸騰状態をキープ
・火を止めて蒸らしに10分放置
「はじめチョロチョロ、中パッパ。赤子泣いても蓋取るな」という昔からの教え通りですね。
ぜひこのルールを守って試してみてください。ふっくら艶やかなおいしいごはんが炊けること間違いなしですよ。
今、あらためてごはんを見直そう
今後は、ごはん以外の周辺を充実させたいと展望を語るシライさん。
たとえば味噌汁とか、漬物とか、サイドメニューとして一緒に欲しくなるものも出していきたいし、さらにはお茶碗や箸といった道具にもこだわりたいといいます。要は、ごはんをおいしく楽しむためのすべてを演出したいのです。
また、米料理は日本だけではありません。海外の米料理にも目を向けて、幅広く紹介していきたいとも語ってくれました。
私たち日本人にとって、切っても切れないはずのごはんですが、最近は米離れも進んでいます。金額ベースではすでにパンの消費額の方が上回っているそうで、このままでは稲作農家の未来は明るいとはいえません。
だからこそ「On the Rice」なのです。
地元の米を東京で販売するのは思い通りにいきませんでしたが、シライさんは
「米を食べる人を増やすことも農業のうち」
と考えて、こうして美味しいごはんの布教活動に勤しんでいるのです。
「実家の農家を継がなかったことへの罪滅ぼしの気持ちもあるんですよ」と、苦笑いしながら話してくれました。
あまりにも日常すぎて、特別目を向けることのないごはん。
あらためて向き合ってみると、どんなおかずでも引き立てられる「出しゃばらなさ」。これほどオールマイティで奥の深い食材もないかもしれません。
さすが主食として君臨してきただけのことはあります。
「茶道」や「華道」があるように「米道」があってもいいんじゃないでしょうか。
どこまでも極めてごはんの魅力を再発見させていってほしいものです。
それがシライさんの米道、「マイウェイ」なのですから。
>>「ごはん同盟」のホームページ
>>「On the Rice」のfacebookページ
(取材:板羽宣人 / 記事:Rose)